今回の研修は、高齢者虐待について学習します。
高齢者虐待は毎年1回は必ず学習する必要がある項目で、私達訪問介護員にとって大変重要な内容となります。
毎年学習することもあり、内容が重複する部分が多いかと思いますが、しっかりと学習していきます。
今回も動画を使用しました。
高齢者虐待については、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(平成17 年法律第124号。以下「高齢者虐待防止法」という。)が、平成18年(2006年)4月1日から施行されており、高齢者虐待を防止する為に運用されております。
この法律では、高齢者の権利利益の擁護に資することを目的に、高齢者虐待の防止とともに高齢者虐待の早期発見・早期対応の施策を、国及び地方公共団体の公的責務のもとで促進することとしています。
介護サービス従事者は、自身の働く現場で高齢者虐待を発見した場合、生命・身体への重大な危険が生じているか否かにかかわらず、市町村への通報義務が生じます。
介護サービス従事者は、高齢者介護の専門職であるがゆえに、虐待行為は決して許されないという認識が求められます。
※通報者に対する不利益な扱いが禁止になった
高齢者虐待防止法ができたことで、通報者が不利益を被ることを防止するためのルールが定められました。
具体的には以下の2点です。
通報は勇気のいる行為ではありますが、介護サービス従事者は専門職として正しい行動が求められております。
また、通報の対応は市町村役場の高齢者福祉担当課、地域包括支援センターなどが行います。
市町村からの事実確認や指導などがあった場合、施設は虐待をした人に対して「してはいけない」と伝えるだけではなく、背景となった原因を分析して再発防止策を練る必要があります。
高齢者本人や家族から訴えがあった場合も、見て見ぬふりをせずに通報し、施設内・事業所内で知識や技術をシェアすることが重要です。
施設全体・事業所全体で組織的な取り組みをする事で、初めて個々のスタッフがケアに必要な役割を適切に果たすことができるのだと思います。
高齢者虐待の中で、身体拘束は、医療や介護の現場では、援助技術のひとつとして安全を確保する観点からやむを得ないものとして行われてきた経緯がありますが、これらの行為は、高齢者に不安や怒り、屈辱、あきらめといった大きな精神的な苦痛を与えるとともに、関節の拘縮や筋力の低下などにも混乱や苦悩、後悔を与えている実態がある事を学習しました。
身体拘束は、基本的に高齢者虐待と言えるものですが、それでも厚生労働省は「緊急やむを得ない場合」とされているものについては、例外的に高齢者虐待に該当しないと通知しております。
身体拘束に関して、「緊急やむを得ない場合」の手続きに関しては、極めて慎重に手続きを踏む事が求められております。
身体拘束をされると、肉体的に何時間も、あるいは何日も同じ姿勢をずっととらされたり、狭い空間の中に閉じ込められたりしますから、その苦痛ははなはだしいものになります。
また、拘束をされる多くの方は認知症の方ですから、どうして縛られるのかご自身では理解できません。
それでいきなり縛られたり閉じ込められたりするのでとても不安になり怖い思いをします。
これらは身体拘束の「目に見えるわかりやすい害」という事を学習しました。
身体拘束には、さらに「目にはよく見えないけれども重大な害」が潜んでいます。
たとえば、縛られたお年寄りは、例え少しの期間であっても、食欲が低下したり、脱水を起こしたり、褥創ができやすくなります。
ふしぶしの関節が固くなり、筋力が低下して起きられなくなり、そのまま寝たきりになる事もよくあります。
活動範囲が極端に狭くなると心臓や肺の機能も低下しますし、感染症に対する抵抗力も落ちてきます。
すると、かぜから肺炎となったり、あるいは、褥創や尿道から感染が発生したりと、感染を繰りかえす状態に陥り、衰弱が進みます。
それが原因で亡くなることもあります。
また、精神的には、認知症が進行して荒廃状態になったり、最初は身体拘束に抵抗していたおとしよりもやがて諦め、生きる意欲を失っていきます。
高齢者虐待を発見した場合、上記でも学習しましたが、下記の通り通報の義務が生じます。
まとめ
キーワード「尊厳を守る」
昨年の「高齢者虐待について」のまとめでも述べましたが、大事なのは、高齢者の方々の尊厳を守らなければならない事です。
私たちはケアを行うとき、利用者の方を一人の大切な人としてとらえ、相手の尊厳を損なわないようにかかわらなければいけません。
尊厳を守るときには、「身体面」「精神面」「社会面」それぞれの面の尊厳に注意を払う必要があります。
身体面では、怪我や病気の発生、機能低下・能力低下・参加低下の発生を防ぐことなどであり、精神面では、痛みや不安・不信、悲哀、怒りなどを感じさせないことであり、社会面では社会的権利(例えば選挙時の投票権)の剥奪、経済的損失などを防ぐことです。
日本国憲法第13条では、「すべて国民は、個人として尊重される」と述べており、介護保険法でも平成17年の改正で、介護保険法の目的に要介護状態となった高齢者等の「尊厳の保持」を明確化する趣旨が盛り込まれました。
憲法で定められている通り、自分の人生を自分で決め、周囲からその意思を尊重されること、つまり人生を尊厳をもって過ごすことは、介護の必要の有無に関わらず誰もが望むことです。
誰もがなりたい、されたい、夢や希望や願いを思う事は、人にとって必要な権利なはずです。
利用者の方々は、私達と違う世界に住む人ではありません。
もしかしたら、いつか自分も介護が必要になるときがくるかもしれません。
大事なのは、自分自身に置き換えてみて、提供しているケアが適切なのかを、日頃から見つめていく事が大事なのかな、という事を考えさせられる研修でした。